ここ数年でイギリスにおけるBVoDサービス(放送局によるオンラインが配信)の需要がさらに高まっている。イギリス放送メディア最新状況を2023年8月Ofcom発行のMedia Nations 2023の内容から紹介する。
イギリスのオンライン配信における視聴動向とテレビ広告費
イギリスの2022年のテレビ視聴率および視聴数は減少したが、放送事業者のビデオオンデマンド(BVoD)サービスの利用は増加していると発表された。
テレビ視聴時間に加えて、すべての性年代のテレビ接触率(週間)も減少しており、2017年の91%から2022年の79%まで縮小した。2021年から2022年にかけての4ポイントの減少は、過去最低の数値だ。また、テレビ全体の傾向と同様に、主要な放送局の接触率も減少した。BBC Oneの接触率は最も高いが(58%)、2017年からは12ポイント低下している。
出典:Barb
イギリスでもオンラインでのコンテンツ配信に積極的に取り組んでおり、過去数年間でBVoDサービスへの視聴は着実に増加している。BVoDは、2022年に視聴時間が増加した唯一の視聴形態だ。BVoDサービスの視聴は、過去数年間着実に増加し、2017年の総放送視聴の4%から2022年には10%に成長。2022年に最も視聴されたいくつかの番組は、同様に大きな視聴者をBVoDサービスを通じて視聴獲得しており、特に人気ドラマは若年層がBVoDで視聴を牽引。これに伴いBVoDの利用率も上がっている。
出典:Barb
BVoDの主な視聴用途はいまだにタイムシフトだ。イギリスの視聴者の大多数(74%)は、放送機関がキャッチアップ(見逃し)、オンデマンド、またはストリーミングサービスを提供することが重要だとしている。
BVoD視聴者によるサービス利用の主な理由は「テレビで見逃した番組をキャッチアップするため」(66%)で、次いで「自分が見たいときに見ることができる」(51%)や、「特定の番組やボックスセットを視聴する」(40%)だ。また、回答者の75%がこれらのサービスでライブ視聴もできることを既知であった。
2023年 イギリスのテレビ広告収益
イギリスの2022年の広告支出は総額約347.7億ポンド(約5兆7,479億円 * 2022年12月レート £1=165.314円で計算)で、2021年から8.8%増加した。主に、11.1%増加したデジタル広告が主導し、28.1億ポンド(約4,645億円)の増加のほとんどを占めました。一方、テレビ広告は1.9億ポンド(約315億円)減少し、コロナ渦から回復した2021年の収益成長を維持することができなかった。
出典:Ofcom
テレビ広告はBVoDを含めても1.4%減の53.8億ポンド(約8,894億円)であった。一方、BVoDサービスによる広告収益は15.4%増の8.5億ポンド(約1,405億円)だったが、テレビ広告全体の収益減少を補うには十分ではなかった。
出典:AA/WARC Expenditure Report; IAB UK PwC Digital Adspend Study 2022
総合的なTV広告収入はわずかな減少となったが、民放の2022年のオンラインビデオ広告は二桁の成長率で14.7%の収益増を達成し、総額約27億ポンド(約4,463億円)に増加した。これは過去最高の収益だ。
オンラインビデオ広告収入の相当部分は、通常テレビ広告枠を利用しない中小企業の広告主から得られいる。ただし、新しいアドレサブルTV広告フォーマットにより、少しずつこれらの広告主にとっても利用しやすくなっていくだろう。
出典:Ofcom
備考:Digital transactional: ****/Online video advertising: 動画以外のサービスで配信されるアウトストリーム広告は含まない/Subscription VoD: 定額VoD/Commercial PSBs: 民放PSB、ITV, STV, ITV Breakfast, Channel 4, Channel 5 , S4Cが含まれる/Digital multi channels: 公共サービス放送(PSB) 以外の番組を含む/Platform operators: 有料テレビ収入の推定値が含まれている。これには、定額VoDであるNOWは含まれない
次回は、続きOfcomのMedianationを元に、各放送局のBVoD戦略について紹介する。
関連リンク:
Ofcom – Media Nations 2023
https://www.ofcom.org.uk/research-and-data/tv-radio-and-on-demand/media-nations-reports/media-nations-2023